本庄のたぬきさん

むかし、むかし、

本庄の村に親子のたぬきが住んでいました。

 

とっても寒い冬の夜、おなかを空かせた子たぬきに、母たぬきはこういいました。

 

「いいかい。このお金を持って村のお店で持ち帰りのおそばを作ってもらうんだよ。その時、人の手に化けた右手だけ入り口の扉の隙間から出しておうどんをもらうんだよ。もし反対の手を出してたぬきだとばれたら、捕まってたぬき汁にされてしまうよ。」

 

母たぬきは1000円札を持たせた子たぬきの右手を人間の手に変身させました。

 

「大丈夫。美味しいおそばを買って来るね」

 

子たぬきは嬉しそうにお店へと向かいました。

 

店長が店じまいをしていると、トントンとドアを叩く音がしました。

 

「ごめんなさい。今日はもう閉店しました。」

 

「とてもお腹が空きました。お母さんもおウチでお腹を空かせて待っています。どうかおそばを2つ作ってくれませんか?」

 

気のいい店長はOKして、すぐさまおそばをつくり始めました。

 

いい匂いがしたせいか、おそばをもらうときにうっかりと両手を出して受け取りました。

 

右手は人間、左手はたぬき。

 

しまったと子たぬきは思いました。

 

 

 

そんな事はまったく気にせずに、店長は出来立てのおそば2人前をおかもちに入れて渡しました。

 

「重たいから気をつけて帰るんだよ。おかもちは返さなくていいからね。ありがとう。」

 

本当は最初から店長にはわかっていたんです。

 

だって、声のする高さがおかしいいんです。

そんなに背のちっちゃい人間は赤ちゃんですから、話をする事も歩いて買いに来る事も簡単には出来ません。

 

たぬきの親子は店長が入れてくれた揚げ玉ときざみのりがたっぷりと入ったおそばを満面の笑顔で、大変喜んで食べました。

 

「おかあさん。おいしいね。」

「そうね。ほんとうにおいしいね。てんちょうさんありがとうございます。」

 

数日後の朝、玄関先におかもちがありました。

 

中をあけてみると、たくさんのだいこん、なすびとねぎ、さくらえびが入っていました。

 

店長は嬉しくなって心の中でこうつぶやきました。

 

今度は夏においで。

とても美味しい冷やしそばを作ってまっているからね・・・

 

今でも小さな背をしたお客さんが、「おそばちょうだいな」と買いに来るとか来ないとか・・・